第5 検察記録の特徴
1 検察記録の特徴と,起案への活用
検察記録には,特徴があります。
その特徴を理解しておけば,記録を読むのが,早くなります。
また,起案で求められていることに,より高い打率で答えることができます。
そこで,検察記録の特徴とその活用について,考えてみます。
2 検察記録の特徴
(1)捜査の流れ
ア 流れがある
検察記録は時系列になっており,基本的には,すべての捜査資料が編成されている建前。したがって,警察が送検までにどのような捜査をしたのか,送検後は検察官がどのような絵を描いて捜査したのか,等の,捜査の流れが,検察記録には流れている。
(この点が,刑裁記録,刑弁記録とは異なる,検察記録の面白いところ。)
イ 捜査の流れを読み取るメリット
(ア)証拠書類を発見しやすい
いつごろどんな捜査をしていたかがだいたい頭に入っていると,ある特定の事実の裏付け証拠が必要になったとき,探しやすい。
(イ)担当検察官の考えていたことをトレースしやすい
終局処分起案は,担当検察官の立場で行うものである。だから,検察起案においては,担当検察官の思考をトレースして,それを素直に表現すればよい。 そのためには,送検を受けた検察官がどこを目指して,何を考えて捜査していたのかを,記録から読み取ることが重要である。これを読み取ろうという姿勢で記録を読めば,担当検察官が何を考えていたのかは,わりとわかるものである。
繰り返す。検察起案は,担当検察官の考えたことのトレースである。こう考えれば,検察起案は,そんなに難しくない。(自分でゼロから考える必要はない。自分なりの見解を表現する必要はない。あくまでも,この担当検察官は,何を考えていたか?を表現する。)
(2)並び方:時系列
基本的には,時系列で並んでいる。
スタートは,捜査の端緒。ゴールは,終局処分直前。
(起案中は余裕がないかもしれませんが,起案が終わった後で,時系列の観点から,記録を見直してみると,大変勉強になります。)
3 捜査の流れの読み取り方
(1)「記録総目録」
記録の最初に「記録総目録」とかいう表がついている。この表は,かなり使える。
要は目次なのだが,概ね時系列で並んでいるため,この表を見るだけで,捜査の流れが,ある程度,見えてくる。
記録の種類によって色分けなどをすれば(たとえば,供述証拠,捜査報告書,逮捕状,等で色分けしてみる),捜査のまとまりや事件の特徴も,何となく見えます。
(2)送検直前の捜査報告書
ア 送検前の捜査のまとめの捜査報告書
記録のはじめの方に,時系列に並んでいない捜査報告書があることが多い。
これは,警察が送検するにあたって,検察官に対して警察から見た事件の概要を報告したもの。したがって,送検段階で警察がどのように事件を見ていたか,をここから読み取ることができる。
イ 捜査報告書の見つけ方
この報告書の見つけ方は,二つ。
ひとつは,報告書の日付。時系列に並んでいない捜査報告書であること,送致日の当日か前日くらいに作成された捜査報告書であること。
もうひとつは,捜査報告書のサブタイトル。「令状捜査の必要性について」「強制捜査の必要性について」等の,以後こんな捜査が必要ですよ,みたいなタイトルが多い。
ウ あまり役に立たないかも。
もっとも,あまりにヒントになるところは「省略」となっているので,あんまり役に立たないかもしれない。
(3)最後のPS
記録の最後の方に,いくつかのPSがあるはず。最後のPSは,検察官が描いたその事件のストーリーが記載されているはずなので,これを読めば,検察官がその事件をどのように見ているかがわかる。
終局処分起案では,PSには素直に従うべし。なにせ,そのPSを録取した担当検察官の立場で終局処分を行うのである。自分でPSをとっておきながら,そのPSと別のストーリーで終局処分を行うのは,検察官としてそれはどうなん?と思うでしょ?